今回は日本臨済宗の開祖・栄西禅師のことばを選びました。「心とはなんと大いなるものであろうか。天はどこまで続いているのか計り知ることもできない。しかし、心というのは、その天をもすっぽりと包みこんでしまうのだ」……だいたい、このような意味になるでしょうか。
「心は天よりも広い」。なんとおおらかな感懐でしょうか。栄西さんのこのことばからは、爽やかな風が吹いているように思います。しかし、このことばは、実は決して大げさなものではないのですよね。
天の広さも、地の厚さも、海の深さも……すべて、私たちは「実際に」自分で現地に赴いて、それらを計ることはできません。それでも、いまここにおいて、それらとともにあることは、確実にできます。「果て」がないものと、いまここで、間違いなく、ともにあることができるのです。
いまここで、すでに、「すべて」と、ともにある――
あまりに「普通」のこととしてやってしまっているけれど、考えれば考えるほど、こんなに「わけがわからない」こともないように思えます。「自分」を超えた心の広大さには、ただただ驚き、頭を垂れるばかりです。
(「ほぼ週刊彼岸寺門前だより」2016年6月26日発行号より転載)